司法書士試験を受験して、不合格濃厚だ…次の司法書士試験までモチベーションを保てないので、独学で行政書士試験でも受けようか…
今年、司法書士試験にチャレンジされてこのように感じている方の中にはそういう方もいるのではないでしょうか。
私は、司法書士試験合格を目指している途中で行政書士試験に合格しました。その際に思った司法書士試験受験生が行政書士試験に挑戦する際の心構えについて記載したいと思います。
心構え
- 司法書士試験と出題が重なる法令でも行政書士試験の過去問はしっかりと取り組むこと
- 戦略をしっかりと立てること
- 行政書士試験までは行政書士試験に専念すべし
司法書士試験と出題が重なる法令でも行政書士試験の過去問はしっかりと取り組むこと
司法書士試験と行政書士試験の両方で出題される法令は憲法、民法、商法です。これらの法令は、テキストの読み込みといったインプット面については司法書士試験で勉強したもので十分です。現に、私は、これらの範囲については行政書士のテキストを一切使いませんでしたし、行政書士試験のために新たに追加した知識もありませんでした。かなりのアドバンデージがあります。
しかし、出題形式や狙われるポイントは司法書士試験と異なる部分も多くありますので、しっかりと行政書士試験用にアウトプットの練習をしておかなければ十分に得点できません。特に記述については、何回か練習しておかないと減点されてしまう可能性があります。
戦略をしっかりと立てること
試験の準備や戦い方を間違えると、勉強範囲が膨大になる可能性があるのが行政書士試験です。
行政書士試験は、司法書士試験と異なり、合格基準が明確にある絶対評価の試験です。絶対評価の試験は、合格者を人数によって決めるのではなく、点数が一定ラインを突破できていれば人数制限なく、合格できる試験です。この試験制度に基づき、どの問題で点数をとって合格ラインを越えていけばよいのか(言い換えると、どの問題ならば間違っても良いか)考えておけば、そこまでハードルが高い試験ではありません。しかし、戦略を立てずにすべての出題範囲をまんべんなく勉強するとなると、とてつもなく勉強量が増えますので、注意しましょう。
合格基準
次の要件のいずれも満たした者を合格とします。
- ① 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50パーセント以上である者
- ② 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40パーセント以上である者
- ③ 試験全体の得点が、満点の60パーセント以上である者
(注) 合格基準については、試験問題の難易度を評価し、補正的措置を加えることがあります。
私が当時とった戦略(勉強・試験計画)について参考として示したいと思います。
※勿論、人それぞれ状況が異なりますので、各自過去問を解いて分析することをお勧めします。
【対策方法】
- 憲法・・・得点源にすべき。世間では司法書士試験よりも難しいと言われているものの、そこまで難しさを感じない。判例知識は押さえておくべき。基本的に毎日過去問を解く。
- 民法・・・得点源にすべき。問題のレベルは司法書士と比べると、簡単だが判断するポイントは異なることが多い。基本的には毎日過去問に触れるようにする。基本的に毎日過去問を解く。
- 商法・・・得点源にすべき。司法書士試験と比べて癖のある問題が多い印象。過去問はしっかりと解いて本番慣れしておく必要があるが、注力する必要はなし。
- 基礎法学・・・真剣に対策しようとしてもしきれないので、スルー。過去問は解いて起き、知っている問題ならラッキーという気持ちでいるようにする。
- 行政法・・・皆ができるところはとりきる。行政法は法令科目の合計点のうち45%程度占めているので、対策すべき。毎日、テキストや過去問に触れて慣れていくべき。ただし、地方自治法等、手が回らなければ他で点数をカバーして7割はとれるようにする。基本的に毎日過去問を解く。
- 一般知識・・・一般知識等科目の足切りラインの40%を超えるように勉強する。情報通信・個人情報、国語についてはしっかりと対策を立てて勉強するが、それ以外の公民は範囲が広すぎてまじめにやっても得点に結びつかない可能性が高いので、スルー。ただし、就活等で用いられる最近の話題がまとまった書籍を購入してざっと目を通しておくべき。
行政書士試験までは司法書士の勉強をせず行政書士試験に専念すべし
私は当時、ある程度残業がある一般企業で働きながら9月頃から始めて2か月の勉強でチャレンジしました。時間がなかったこともあり、一旦、司法書士試験の勉強はストップし、行政書士試験にのみ注力しました。仮に、司法書士試験の勉強を同時並行でやっていたら受からなかったと思います。
司法書士受験生にとってのメリットとデメリット
次のとおりです。
メリット
- ベテラン受験生や司法書士試験に自信をなくしてしまった方にとっては、合格したら自信につながります。
- 勉強のやり方、試験の対策方法が身につく。司法書士試験は範囲が膨大であり、覚えては忘れの繰り返しで合格点との距離がかなりあります。しかし、行政書士試験は簡単ではないですが、司法書士試験と比べれば、対策を立てやすく、やっていくうちに合格点が見えてきます。
- 行政法を勉強すると、登記法の理解が深まる。登記法も行政手続きなので、行政法を学んでいると、試験問題として影響はないものの、登記法における行政の仕組みが理解できる。
- 将来、ダブルライセンスとして働ける。司法書士をやっていれば、行政書士があれば広くサポートできるのに…と思うときが少なくありません。勿論、そうした場合、外注しても良いのですが、自分でできる資格が与えられているというのは強みになります。
デメリット
- 時間的負担が大きい。行政書士試験中、司法書士試験の受験勉強を並行して行うと、非常にハードであり、司法書士試験の勉強時間を大幅に奪うことがある。
- 精神的負担が大きい。不合格だった時の精神的負担が大きい。
司法書士試験と行政書士試験の切り替え
司法書士試験の勉強を中断して行政書士試験を目指す際の切り替え、行政書士試験が終わってから司法書士試験に戻る際の切り替えにも注意が必要です。
- それぞれの試験の知識をごちゃ混ぜにしない。
- 司法書士試験の経験は有利に働くが、行政書士試験の対策をしなければ落ちる。
- 行政書士試験受験後の気持ちの切り替えが重要。
それぞれの試験の知識をごちゃ混ぜにしない。
司法書士試験と行政書士試験は同じ法令でも問題として狙ってくる箇所が異なります。
行政書士試験を受験するうえで、司法書士試験の知識のみ出題されている場合もありますが、その知識は行政書士試験では活きない可能性もあるということを認識し、行政書士試験挑戦中は司法書士の知識を封印しておいた方が良いかもしれません。一方で、行政書士試験で得た知識については、司法書士試験で問われない可能性が高いので、行政書士試験で得た知識を司法書士試験の知識とすべきではありません。
司法書士試験の経験は有利に働くが、行政書士試験の対策をしなければ落ちる。
行政書士試験の合格率は、例年10%程度の難関試験です。司法書士試験を目指した後に、行政書士試験を挑戦すると、ある程度、得点できてしまうので、簡単ではないかと勘違いしてしまう方もいます。しかし、私の知る限り、そういう方は軒並み、行政書士試験でも合格できていませんでした。しっかりと、行政書士試験として対策をとり、行政法等勉強しないと不合格になります。
行政書士試験受験後の気持ちの切り替えが重要。
私は、当初、行政書士試験を受けた後には意気揚々と司法書士試験に専念できるのではないかと思っていました。しかし、実際は、記述でしっかりと得点できているか不安になったり、司法書士試験を受験したときと同様のやり切ったという脱力感があったりと、司法書士試験への気持ちの切り替えに非常に苦労しました。もし行政書士試験を受験するなら、合否にかかわらず、行政書士試験を気にしないような心構えを持っておくことをお勧めします。
最後に
私は、2012年7月初旬に司法書士試験を受けましたが、自己採点で基準点にも達していないだろうことに気づき(実際は午前午後ともに基準点―1問程度の実力)、資格試験に不向きではないかと落ち込んでいました。そうした中、資格試験に挑戦していくうえでこのまま続けるべきか検討した際に、行政書士試験に出会い、これに受からなければ資格試験から撤退しようと背信の陣で挑戦しました。結果は、総合180点代のぎりぎり合格でした。
行政書士試験を受けたことで、勉強のやり方、時間が限られている中でやりきるにはどうしたら良いか自発的に考えて合格できた経験は、その後の司法書士試験においても自信につながりました。
すべての司法書士試験受験生が等しく行政書士試験にチャレンジすべきとは決して思いませんが、既に行政書士試験に申込みをされ、悩まれている方がいれば、折角の機会なので、チャレンジすることをお勧めします。
コメント