司法書士を取得して以来、知人から相続登記のやり方を相談されることが何件かありました。その中で、こういう方はご自身でやっても良いのではないか、逆にこういった方は司法書士に依頼された方が良いのではないかというものをまとめてみました。
相続登記をご自身でやっても大丈夫な方
相続登記をご自身でやっても良さそうな方は、次の条件をすべて満たした方だと私は思います。
(1)平日時間がとりやすい方
相続登記において、平日に行わなければならないことは、主に①戸籍謄本等の登記の添付書類を取得すること、②法務局に登記申請書を提出すること、③登記に不備があれば修正すること等があげられます。その他、行政書類を作成されたことがない場合には、申請前に事前に法務局で書類を確認してもらった方が良いかもしれません。
①については郵送でも取得できますが、郵送の場合、手数料支払いは定額小為替を郵便局で取得する必要があります。
②については、郵送で申請することもできます。
③については、内容によっては法務局の方で対応してもらえることもありますが、基本的には法務局へ足を運んで修正します。
(2)戸籍謄本が苦にならない方(ご自身で調べてできそうな方)
相続登記で大変なのが戸籍謄本の取得になるのではないでしょうか。相続登記に必要な戸籍謄本は、被相続人(亡くなられた方)が生まれたときから亡くなられるときまでの戸籍謄本と法定相続人の戸籍謄本になります。
古い戸籍謄本になると、ヘビが走った跡のような草書体で記載されており、この後、どの戸籍謄本を取得すれば良いか判断できない場合もあります。そうした中でも自力若しくは市役所と相談して次に必要な戸籍謄本を探すことを苦に思わずにできないと、意外としんどいと思います。
(3)法律関係を調べて正しく書類作成できる方
単純に相続登記といっても主に次の3パターンあるのですが、自分がどのパターンの相続登記をしたら良いか、どうやって書類作成するか理解できておく必要があります。
【相続登記3パターン】
① 法定相続による相続登記
亡くなられた方の遺言もなく、遺産分割協議を行わない場合の登記であり、例えば、配偶者と子2人で法定相続をするのであれば、配偶者は1/2、子はそれぞれ1/6ずつ持分を分けて登記することになります。
② 遺産分割による相続登記
当事者間で遺産分割協議をしてそれぞれの持分を決めます。
③ 遺言による相続登記
亡くなられた方が遺言を残していれば、その遺言に従って持分を決めます。これには、裁判所で遺言書を検認する手続きが加わります。
ご自身で書類を作成できそうか否かを判断するには、法務局のウェブサイトでひな型がありますので、この書類をみて作れそうかみてみるのも良いかもしれません。
(4)今回の相続関係、事案が複雑でないこと
最後に今回の相続関係や事案が複雑でないことも重要です。正しく相続関係を記載していないと間違ったまま手続きが進められてしまい、予期せぬ結果になることもあります。例えば、相続人のうち相続放棄を希望されている方がいたとして、法律用語の相続放棄ならば裁判所の手続きを経て一切の相続財産をもらわないことになりますが、相続放棄の意味を勘違いして一部の土地や建物のみを相続しないことを相続放棄と表現されている方もいます。本来ある土地だけを相続しない思惑であっても、裁判所の相続放棄をしてしまえば、すべての財産を相続できなくなってしまいます。
こうした場合には、司法書士に最初から協力してもらって対処した方がミスなく済みます。
ご自身で相続登記をする際に役立つもの
(1)法務局ウェブサイト
相続登記に必要なひな型が手に入ります。
(2)法務局の相談
事前予約が必要な場合もあるので、最寄りの法務局にご確認ください。
ある程度、ご自身で書類を作成し、添付書類や相続登記をする不動産登記簿謄本を持参しないと十分にアドバイスをもらえないこともありますので、ご注意ください。
(3)無料司法書士相談
こちらについても法務局の相談と同様になります。
(4)書籍
自分にあった相続手続きがどれになるのか場合分けされていて、更にちょっとした対応のコツが書かれていて、あまり複雑でない相続登記ならこの一冊で網羅されています。
司法書士に頼む場合のメリット等
上記を見ていて、煩わしいと感じているのであれば、司法書士に依頼しても良いかもしれません。
費用は、土地と建物1筆ずつの合計で5~10万円程が報酬になるのではないかと思います。この他にも、戸籍謄本の取得で報酬が発生することもありますし、銀行の手続き等もまとめてトータルで相続手続きを代行するなどして報酬が発生することもあります。
まずは見積もりをとってみて、これで高いと思うのか、安いと思うのか判断されても良いかもしれません。
最後に
個人的にはご自身で相続登記をしたい、司法書士報酬分を浮かせたいという気持ちがあるならばご自身でやっても良いと思いますし、司法書士になる前に自分で祖父の相続登記書類を作成したときにそれなりの達成感があったことを覚えております。しかし、書類集めが予想以上に大変であると感じたり、書類作成が予想以上に細かいと感じる方も多く、途中で挫折してしまう方も見てきました。それを集約させたのが上記のとおりでありますので、ご参考にしていただけたら、幸いです。
また、2024年4月1日以降は相続登記が義務化されます。相続登記が義務化されれば、不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由なく登記・名義変更手続きをしないと10万円以下の過料対象になり、今後は、当面放置しておくということが難しくなってきますので、ご注意下さい。
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