誰にも教えず自分で親の相続登記をしたのに不動産屋から「家を売りませんか?」と書かれたはがきが送られてきた。気持ち悪い…
司法書士に相続登記をやってもらったら、不動産屋から「家を売りませんか?」と書かれたDMが送られてきた。司法書士が不動産屋に情報を売ったの?
相続登記をしたら不動産屋から連絡がきて、不気味に思った経験はないでしょうか。
どうしてこのようなことが起きるのか解説したいと思います。
結論
このような不動産屋は、①法務局に対して、情報開示請求によって、月単位で相続登記申請した物件の情報を取得し、②その物件の不動産登記簿謄本を取得することで、最近相続登記をした物件の所有者を特定し、その所有者に対して営業を行っているものと思われます。
決して司法書士が情報をリークしているわけではありません。
解説
上記に関してもう少しかみ砕いてご説明したいと思います。
まず、不動産屋は、一般市民の権利として、行政である法務局に情報公開請求することができます。この情報公開請求は、基本的には、行政が作成した文書であれば、秘密にすべき内容は黒塗りにされてしまいますが、すべて公開できることになっています。この点、法務局では、登記申請を受け付ける際に不動産登記受付帳と呼ばれる台帳(以下のイメージ図のようなものです。)を月単位で作成しています。この台帳には、登記名義人(所有者)の住所・氏名は掲載されないものの、登記申請の受付日、登記申請があった不動産の所在地、相続や売買等の登記申請をした理由等が記載されています。
不動産屋は、こういった不動産登記受付帳を情報開示請求によって取得し、最近相続登記を行った物件の所在地をリスト化して把握しているのです。
なお、この不動産登記受付帳に対する情報開示請求は、かなり一般化して行われており、法務局ではわかりやすい定型のひな型を用意しており、誰でも請求できるものです。
【イメージ図】
次に、不動産登記受付帳に基づき相続登記を行った物件の所在地の不動産登記簿謄本を取得します。この不動産登記簿謄本は、その物件の所有者の住所・氏名が掲載されている書類ですが、どなたでも取得できるものになります。特に、最近は不動産登記簿謄本に記載されている情報はインターネットでも簡単に取得できるので、そこまで手間にならず、相続登記の物件の所有者の住所・氏名をつかむことができるのです。
個人情報の特定につながる不動産登記受付帳の開示請求は良いのか?
ここで多くの方は、「えっ!?でも、個人情報を渡しても良いの?」と思われるかもしれません。しかし、法務局は個人情報を提供しているわけでもないし、そもそも不動産登記簿謄本の所有者の住所・氏名はもともと開示されるものだから、現行の判断では、良しとされているのではないかと思います。
この点の課題がよりピックアップされてくれば、今後、こういった方針も変わってくるのかもしれません。
不動産屋から突然の連絡を受けたときの受け止め
中には、嫌だと感じるかもしれませんが、法令上は問題ないので、現行の取扱いがそうであるならば、仕方のないことと認識せざるを得ないのが現状です。
後は、そういった手紙を受け取った方ご自身がそういった情報開示請求で取得した情報に基づいて連絡をしてきた業者をどのように受け止めるか次第かと思います。
ちょうど相談したかったので良かったと思う方もいれば、そういうことで情報を集める方は嫌だから別の業者に相談したいと思う方もいるかと思います。
この点については、しっかりと考えて対応されることをお勧めします。
司法書士が不動産屋に情報をリークしていることはあるのか?
上記のことがあっても、それでも司法書士が不動産屋に情報をリークしているのではないかと思う方もいるかもしれません。
しかし、司法書士がリークすることはないと思います。
というのも、司法書士には、司法書士法第24条で守秘義務が課されております。これに違反したら、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(司法書士法第76条)ので、そこまでのリスクを冒してリークすることは考えられないかと思います。
最後に
本件で少しでも疑問が解消できたなら幸いです。
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