司法書士試験に合格したけど、認定考査を受けるべきなの?
どうやって勉強するの?
司法書士試験を合格した方の中には、ほっとされている方、もう勉強したくないという方もいるのではないでしょうか。
しかし、本当の司法書士試験は、まだ終わっていません。簡裁訴訟代理等能力認定考査、いわゆる認定考査に合格してこそ司法書士試験が完全に終わったと言えます。
実際に認定考査はどういうものか解説したいと思います。
認定考査ってどのようなものなの?
認定考査に合格すると、大まかに言えば、簡易裁判所において一定の訴訟代理行為等(訴訟額140万円以下)を行うことができるようになります。また、認定司法書士と名乗れるようになります。
認定考査を受けるには、司法書士に合格した方と司法書士登録されている方であり、司法書士法第3条第2項第1号に規定する研修の課程(いわゆる特別研修)を修了する必要があります。
実務への影響
実務をやっていると、債務整理等の裁判系の業務をやっている方であれば必須となりますが、そうでなければほとんどやらないことが多いです。合格したけど、一切使っていない方も多いのかと思います。また、実務で裁判手続きを行わなければ、認定がついているか否かで評価が変わるということもあまりないように思います。
なお、私はちょっと特殊ですが、企業法務をやっていると、弁護士に頼むほどでもないけど、お金を支払っていただけない方に対して支払督促や簡易裁判所の裁判を実施することもありましたので、認定司法書士になっていた方が仕事の幅が広がり、メリットの方が大きいように思います。
いつ受けるべきか?
では認定考査はいつ受けるべきでしょうか。司法書士に合格された方の中には、しばらく休んで数年後に受けようと思う方もいるかもしれません。しかし、認定考査を受けるなら、司法書士試験合格後できるだけ早く受験することをお勧めします。鉄は熱いうちに打てというわけではないですが、司法書士試験の勉強習慣が残っているうちは、そこまで負担なく受験できますが、しばらく受験勉強から離れたり、法律から離れたりしてしまうと、改めて勉強するのは相当しんどいです。また、働きながらでも合格できますが、司法書士事務所に就職してすぐだと、認定考査の勉強をしている時間もないので、就職後すぐは事務所から何らかの配慮をしてもらわないと苦労することと思います。
とはいえ、一般企業に勤めていて、今後司法書士として働くつもりもないし、特別研修を受ける時間がないというような方であれば、都合の良いタイミングで受験すれば良いかと思います。
合格推移
認定考査の結果推移は、概ね6割から7割は受かっています。司法書士合格者でも3割落ちているという現状がありますが、仕事や家事で勉強に時間がとれなくなった方や完全に遊び惚けている方が一定数いるので、まじめにきちんと勉強していれば落ちる試験ではないと思います。ただし、年度によっては、合格者が半分を切ることもあるので、覚悟して取り組むべきです。
勉強方法
勉強開始時期
勉強開始時期はとにかく司法書士試験合格後からできるだけ早く勉強を開始することをお勧めします。特別研修前に進めておけば、特別研修もスムーズに受けられます。
対策
基本的に資格学校で認定考査の講座を受講せず、独学で十分です。しかし、試験勉強に不安を感じたり、自分でいちいち考えていくのが面倒であれば資格学校を受講することをお勧めします。
テキストを読んでとにかく過去問を解いていくことをお勧めします。敢えて、他資格やロースクールで提供された要件事実の問題を解く必要はありません。
また、過去問を解く際は、何回かは時間を測って実際に手を動かして書く練習も必要です。司法書士試験の筆記試験は択一と申請書を記載する試験であまり文章を記載することはありませんでした。しかし、認定考査は大まかに言えば訴状を書く試験ですので、時間内にどのように記載するかという感覚をつかむ必要があります。
お勧め教材
テキスト
要件事実の考え方と実務〔第4版〕
お勧め度★★★★★
特別研修でも使いますし、とてもよくまとまっています。
ほとんどの受験生がもっていますし、購入すべき本です。通称、カトシン本。
司法書士 簡裁訴訟代理等関係業務の手引
お勧め度★★★★★
特別研修でも使います。司法書士倫理の問題に対応するために必要です。受験生のほぼ全員がもっています。通称、手引。
認定司法書士への道〔入門編〕〔理論編〕〔実践編〕
お勧め度★★★☆☆
試験対策用として非常によくまとまっているテキスト。伊藤塾生が使っていて、カトシン本に加えて購入されている印象です。私は、3分冊になる前のものを購入していましたが、特別研修でカトシン本が使われているので、こちらまで手を出すと、分量が多くなりすぎてしまうから、使用を断念しました。通称、道。
新問題研究要件事実―付ー民法(債権関係)改正に伴う追補
お勧め度★★☆☆☆
要件事実初心者にとって非常にわかりやすい。特別研修でもよく使う。しかし、私は購入しませんでした。理由としては、単に文字サイズやフォントが自分にあっておらず、見にくかったからです。ただし、カトシン本ほどではないですが、特別研修でも使うことがあるので、購入されている方も多くいました。
第3版 ながめてわかる! 認定考査対策と要件事実の基礎―司法書士 特別研修―
お勧め度★★★★★
認定考査の対策と言ったらこの一冊になります。これは独学なら必須です。タイトルでは「ながめてわかる!」と書いてありますが、実際はながめてもわかりません。実際に書いて覚えた方が良いと個人的には思います。
過去問
『第3版 ながめてわかる!司法書士 特別研修 認定考査対策と要件事実の基礎』別冊 司法書士認定考査過去問題・解答集
お勧め度★★★★★
独学なら「ながめてわかる!」シリーズで演習することになります。独学なら必須です。
お勧め教材まとめ
基本的には、独学ならインプット教材としてカトシン本と手引き、アウトプット教材としてながめてわかるシリーズを使うことになると思います。そして、基礎固めをより強固にしたいなら新問題研究要件事実をやり、時間があるなら道をやるという感じで進めることをお勧めします。
1回目の失敗と2回目の合格
私は、認定考査に1度落ちて、再挑戦で合格しています。言い訳のようになってしまいますが、1度目は、司法書士事務所に勤めたばかりで非常に覚えることがあり、残業も多かったのであまり勉強できませんでした。しかし、2回目は、独学でしたが、万全の準備をし、難なく合格できました。1回目不合格の反省としては、もし忙しい事務所で働きながら目指すのであれば、もう少し早い段階から準備をしておくべきでした。また、就職したのが特別研修の時期でばたばたして勉強に身が入らなかったこともあるので、時期を考えて就職すべきだったとも思います。
最後に
認定考査は、世間で話題になっているNY州の司法試験と似ていて、基本的には合格できると言われますが、何回も落ちると、合格率が極端に下がる試験ではないかと思います。合格するなら短期集中で取り組みましょう。
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