家族や親族の成年後見の申立てをするときに気を付けるべきこと3選

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親が認知症になってしまい、不動産を売却したいのに売却できない。

祖父が施設で寝たきりとなり、祖父の代わりに銀行でお金をおろそうとしたが、お金をおろせなくなってしまった。

などなどを理由にご家族や親族の成年後見の申立てをしようというお考えの方は少なくないのではないでしょうか。

このところ、司法書士として、このような相談を受けることが増えてきましたが、実際に、成年後見の申立てに至ったケースはそこまで多くはありません。

もちろん、成年後見を申立てた方が良い場合は、積極的に活用すべきですが、その制度の内容を聞くと今すぐに必要ではないと感じられる方も多いように思います。

今回は、成年後見の申立てをする前に気を付けておくべきことを説明したいと思います。

そもそも成年後見制度って何?(制度面)

そもそも成年後見制度とはどのようなものでしょうか。

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度というものがあります。

この2つの制度の違いはざっくりいうと、法定後見制度は、本人が既に判断能力が不十分になってしまった際に本人を支援する制度であり、一方で、任意後見制度は、今は本人に判断能力が十分にあるけど、将来判断能力が不十分になってしまった場合に備えて誰を後見人にするか決めておく制度です。

今回のテーマは任意後見制度ではなく、法定後見制度なので、任意後見制度のこれ以上の説明は割愛し、以下から成年後見制度は法定後見制度のことを主眼として発言します。

法定後見制度は、その本人の判断能力のある範囲に合わせて、成年後見人、保佐人、補助人から支援を受けることになります。

なお、判断能力が不十分になった方を成年被後見人等(成年被後見人、被保佐人、被補助人)と呼び、その本人をサポートする方を成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)と呼びます。

※サポートされる側(本人)に対して「被」がつきます。

成年後見制度の役割(機能面)

では、実際に成年後見制度はどのようなものでしょうか。

我々司法書士にご相談をする方の中には、成年後見人等になれば、成年被後見人等の財産の管理権を与えられ、成年後見人がその裁量で自由に財産管理できると感じられている方もいるようです。

しかし、この制度は、様々な理由で判断能力の不十分な方々(成年被後見人等)が不利益な契約を締結してしまったり、悪徳商法の被害を受けたりしないようにするために、成年後見人等がそのような方々を保護し、支援するものです。

なので、決して、成年後見人等が自由に成年被後見人のお金や不動産等の財産を管理できるわけではありません。あくまで本人を守ることに主眼をおいた制度です。

成年後見の申立てを検討する際に気を付けるべきこと

以上の前置きのもと、成年後見の申立てを検討するときに気を付けるべきことは何か説明したいと思います。これは、ある種、私に相談があって依頼するのをやめた理由でもあります。

(1)必ずしも家族・親族が成年後見人等に選任されるわけではない。取りやめできない。

成年後見の申立てを行う際、候補者として家族や親族の名前を記載することができます。しかし、それはあくまで候補者として推薦することができるだけであって、必ず候補者に記載された方が選ばれるわけではありません。

裁判所で成年後見関係事件の概況(https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/kouken/index.html)という資料を公表しているのですが、このデータによると、令和5年1月から12月までの成年後見制度が認容された申立てのうち成年後人等の候補者で親族を記載したのは22%であるのに対して、親族が成年後人等になったのは18.1%になり、親族候補者が必ずしも成年後見人等になれないこともあります。

だったら、成年後見人等が選任されて候補者が親族でなければ、取り下げてもらえばよいと考えた方もいるかもしれません。しかし、現実は成年後見人等の選任後の取下げはできませんので、注意が必要です。

また、仮に、家族・親族が成年後見人等に選任されたとしても、財産が多い等、何らかの事情があれば、後見監督人という方も追加で選任されてしまう場合もあります。この後見監督人は弁護士等の専門職が選任され、彼らに対して報酬を支払わなければなりません。

(2)仮に、家族・親族が成年後見人等に選任されたとしても、基本的には辞められないし、意外とやることがある。

成年後見人等に選任されたら、お金の使い道について計画を立てたり、定期的に家庭裁判所に報告しなければなりません。

対応してみて、意外と大変だと気付いたとしても、簡単に成年後見人等をやめることはできません

成年被後見人等の不動産を売りたいと思い、成年後見人等に選任されたとしてもその仕事だけでなく、継続的な成年被後見人等へのサポートをしなければなりません。これに気が引けてしまう方もします。

(3)成年後見人等が選任されたら、成年後見人等に報酬を支払うことになる。

仮に、家族・親族ではなく、弁護士や司法書士等が成年後見人に選任されたら、報酬を支払わなければなりません。その報酬は、財産状況等によって変わってきますが、月額で2~6万円程度になるかと思います。

これが毎年実施されるとなると、気が引けてしまう方もいます。

それでも成年後見人等の申立てをしたい場合

上記も踏まえても成年後見人等の申立てをしたい場合、司法書士等の専門家に依頼するか自分で申し立てるか2パターンあるかと思います。これについてどう違うのか解説します。

(1)司法書士に依頼する場合

司法書士に依頼する場合は、申立て費用の他、10万円以上は司法書士等の報酬を支払うことになると思います。自分自身でもやらなければならないことは多少はでてきますが、司法書士の指示に従って動けばよいので、楽です。

(2)自分で申し立てる

一方で、自分で申し立てることもできます。今は、裁判所のウェブサイト(※)に成年後見の申立て方法について詳しく記載されていますし、書籍も充実しておりますので、時間に余裕があるのであれば、自分でも対応できます。

しかし、市役所や法務省で必要書類を取得したり、家庭裁判所にもいかなければならない等、手間が生じますので、費用を抑えてご自身でやるか専門家に依頼するかご検討されても良いかと思います。

※申立管轄の家庭裁判所名と「成年後見人等の申立て」のように検索すれば、ひな型等を入手できます。

※お勧め書籍

さいごに

成年後見人等の申立ては、成年被後見人等のための制度であって、そのご家族・親族のための制度ではありませんし、しっかりと考えてから申し立てなければ、思ったものと違うともなりかねない制度です。しっかりとご検討の上、ご決断されることをお勧めします。

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