会社法って覚えることばかりだし、よくわからない。そもそも興味が湧かない。どうすればわかるようになるのか?
このように感じている学生さんや司法書士・行政書士等の法律資格の受験生は意外と多いのではないでしょうか。
私自身は、なぜだか会社法と相性が良く、最初から苦手意識はありませんでしたが、周囲には民法や刑法等と比べて苦手な方が多くいました。
会社法に苦手意識を感じる方と会話していく中で、どうすれば得意になるか考えてみました。
主に行政書士、司法書士試験向けに記載していますが、参考になれば幸いです。
苦手な理由
私の周囲で苦手だと感じている方の意見は次のとおりです。
- イメージがわかない。
- 場合分けが多く、覚えることが多い。
- 条文内に引用が多すぎて読みにくい。
(1)イメージがわかない。
これは、学生さんに多い印象があります。企業の総務や法務部門で実務に携わらないとなかなかイメージがわかないのかもしれません。
(2)場合分けが多く、覚えることが多い。
確かに、覚えることが多いですよねえ。会社の種類、株式の種類、機関設計の種類、組織再編の場合分け等、様々あります。複雑すぎてとっつきにくいかもしれません。
(3)条文内に引用が多すぎて読みにくい。
例えば以下のように前条とか、第〇条とか該当条文に立ち戻らないと理解しにくいか期ぶりになっています。これだけでも読むのも嫌になり、苦手意識が生まれるのも仕方ありません。
(招集手続の省略)
第300条 前条の規定にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第二百九十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。
解決方法
(1)会社法にかかわる利害関係者を念頭に置いて内容を見てみよう。
そもそも会社法にかかわる利害関係者を念頭に置いておかないと、恐ろしくパターンがあり、覚えることが嫌になってきてしまいます。しかし、基本的な考え方がわかっていれば、パターンごとにどの利害関係者に配慮しなければならないのかということに気づき、結論に導きやすくなります。
では、会社法にかかわる利害関係者とは誰かと言うと、「出資者」と「会社債権者」になります。出資者は、株式会社であれば株主のことを指します。一方、会社債権者は、その会社に債権を持っている方、例えば、会社に融資している銀行であったり、会社の仕入先であったりします。それぞれの利害関係者の視点でみたとき、不利益になっていないか、それを解消するためにどのようなルールになっているのか考えることで、一つ一つのパターンを覚えるのではなく、考えて答えにたどり着くことができるようになります。
【例】株式併合と株式分割の決議機関の違い
この2つの手続きについてはそもそも暗記レベルで対応できるかと思いますが、利害関係者を念頭に置いた場合の私なりの理解の仕方についてご説明します。株式併合は例えば、2株を1株に、3株を2株にするというようなものですが、併合割合によっては株式に端数が生じてしまい、そうなれば株式を失う、議決権を行使できなくなる場合もあり、株主にとっては不利益になるリスクがあるので、株主総会では特別決議で行うべきである。株式分割は、1株を2株に、2株を3株にするというものですが、株式分割をしても株主の株式がただ増えるだけであり、株主にはデメリットはありませんので、敢えて株主を呼んで株主総会を開催するのではなく取締役会の決議で良いとの判断になります。
このレベルでは正直なところ、このように考えなくて十分と思うかもしれませんが、組織再編等のように内容が複雑になればなる程、この視点から丁寧に一つ一つ読みほどいていけば理解していくのではないかと思います。
なお、利害関係者をおさえる際に注意しなければならないこととして、会社の従業員としての地位は会社法では扱っていません。会社に関する法律なのだからそこで働く人たちも考慮すべきとも思いますが、その役割は労働法が担っており、会社法で考慮すべきなのは、お金を出してくれる人を対象としています。
(2)まずは過去問に記載されている範囲で学習しよう
会社法はあらゆるパターンを考慮して、学習すると、一向に終わりません。まずは、資格試験を目指されている方であれば、過去問に記載されている問題の学習をすれば十分です。あまり範囲を広げ過ぎてしまうとやることが多すぎて嫌になります。
(3)引用条文の題目が記載されている条文集を使おう。
個人的にお勧めなのは、司法試験・予備試験対策用の教材となりますが、LECから販売している「完全整理択一六法」(通称、完択)になります。完択は六法の読み込みに特に優れていて、条文内に記載されている条文にその題目が記載されていて非常に読みやすくなっています。私は、司法試験だけでなく、司法書士試験や行政書士試験の際にも愛用していましたし、ちょっとした条文の確認であれば、未だに使用しています。
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(4)テキスト等の比較表にはなぜその対比が生じるのか考えながら読んでみよう。
特に、司法書士試験のテキストでは親切にも比較表が多くあります。比較表はなぜその対比が生じているのか、この対比で利害関係者への影響はどのように変わるのか抑えることでぐんっと理解が増します。なお、念のため、補足しますが、もし資格試験を目指すために会社法を勉強されているのであれば、大まかな制度の意味をおさえる程度でよく、あまり深堀し過ぎない程度に抑えましょう。
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(5)イメージをつかもう
一番はご自身の知っている会社の商業登記簿謄本、定款、体制図を見ることで、少しは理解が深まると思います。
なお、商業登記簿は、法務局に行けばどなたでも取得できます。
定款については企業ウェブサイトに掲載していることもありますが、上場会社ならば、東証のウェブサイトから確認できます。
体制図については、有価証券報告書やコーポレートガバナンス報告書に記載されていますので、「企業名(主に上場会社に限る)+有価証券報告書orコーポレートガバナンス報告書」で検索すれば、確認できます。
また、実際に証券口座を作って、株式の購入を検討してみるのも意外と理解しやすくなります。実際に株主という利害関係者になるわけなので、会社法に当事者意識を持つかもしれません。
最後に
私が司法書士試験受験生だったころ、最初に得意になった法律が会社法でした。
勿論、最初はとっつきにくいかもしれませんが、ある程度、基礎ができてくれば、そこからは一気に得点できるようになりますし、組合せ方がわかるとおもしろくなってきます。
参考になれば幸いです。
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